正常圧水頭症は脳室(脳脊髄液を貯めている部屋)に脳脊髄液が大量に溜まり、脳を圧迫することにより「認知症」、「歩行障害」、「尿失禁」等の症状が出現します。脳室に溜まった脳脊髄液を別の場所に流す手術(脳室―腹腔シャント術、腰椎―腹腔シャント術)によって「認知症」を含めた症状が改善する可能性があります。
慢性硬膜下血腫は軽微な頭部外傷後、数ヶ月して頭蓋内の硬膜(脳を覆う硬い膜)と脳の間に血が溜まる疾患で、「認知症」の原因にもなります。局所麻酔下(覚醒したままの麻酔)で頭蓋骨に直径1cm位の穴を空け、その穴を通して溜まった血腫を吸引除去する手術で、術後劇的な症状の改善が見込まれます。
アルツハイマー型認知症の人の脳内では、共通してアセチルコリンの量が減少しています。アセチルコリンは認知機能に深く関わる神経伝達物質の一つで、脳内のアセチルコリンの相対的減少がアルツハイマー病と関連があるとされています。ではどうしてアセチルコリンが減少しているのか。実はその理由がよくわかっていません。
アルツハイマー型認知症の特徴の多くは明らかとなっていますが、何が主要な原因なのかという問題については、複数の仮説が共存しているのが現状です。それでも、アミロイドβの脳内蓄積が重要な因子であると考えられています。アミロイドβの脳内蓄積により脳神経細胞は急速に死滅(脳の萎縮)していくからです。(ただし、これは前後関係で推測されているだけで、因果関係を証明する報告はありません。)そして、アルツハイマー病の脳神経細胞死を抑える治療薬はまだ開発されていません。
65歳以上の高齢者を5歳刻みで統計を取ったところ、認知症の人の出現率は倍増を繰り返している事がわかりました。グラフは平成4年に発表されたものですが、何もしなければ、この速さで認知症患者は増加します。認知症になる前に、予防することが最も重要なことがおわかりいただけるでしょう。